利益が増えたのに、お金はどこへ行った?利益と現金の違いを具体例で解説

経営支援

こんにちは!中小企業診断士のなかりょです。


「今年は利益が増えた。なのに、銀行口座のお金は思ったほど増えていない」


では、なぜこんなことが起こるのか?


会社の利益が増えれば、その分だけ手元のお金も増えるように思えますよね。
実際にはそうとは限りません。


一言でいえば、利益と会社にある現金は、同じものではないから


例えば、
売上が増えても、入金がまだであればお金は増えない。
仕入れを増やせば、商品が売れる前にお金は出ていく。
設備投資や借入金の返済によって、利益とは別に支出が発生することもある。


利益が増えたのに増えなかったお金は、いったいどこへ行ったのか?


この記事では、
「利益が100万円増えた会社」を例に、利益がどのようにお金へ変わり、どこで現金とのズレが生じるのかを具体的に追っていきます。


最後には、お金がどこに行ったのかを確認する方法も紹介したいと思います。

利益が増えても、お金が増えるとは限らない

利益と会社のお金は何が違う?

利益とは、
簡単にいえば会社が一定期間にどれだけ儲けたかを表す数字。
売上などの収益から、仕入れや人件費、家賃などの費用を差し引いて計算します。


会社のお金とは、
銀行口座や手元にある現金・預金のことです。


この2つが一致しないのは、
売上や費用が計上されるタイミングと、実際にお金が入ったり出ていったりするタイミングが違うことがあるからです。


例えば、
商品を100万円で販売して売上を計上しても、取引先からの入金が翌月なら、その時点では会社のお金は増えていません。

「利益が増えた=現金が増えた」ではない理由

利益が増えても、そのまま現金として会社に残っているとは限りません。


売掛金としてまだ入金されていなかったり、
仕入れた商品が在庫として残っていたりすることがあります。
設備投資や借入金の返済によって、利益とは別に現金が出ていくこともあります。


「利益はいくら増えたか」だけではなく「増えた利益はどこに行ったのか」を見ることが大切です。


「利益が100万円増えた会社」を例に、その100万円の行方を追ってみましょう。

利益100万円はどこに行った?具体例で追ってみる

利益と会社のお金は同じではないことを説明しました。



実際にどんなズレが生じるのでしょうか。
A社を例に、前年より利益が100万円増えたケースを考えてみます。

①売掛金に50万円が姿を変えた

A社では今年、売上が増えたことで売掛金が50万円増加しました。


売掛金とは、商品やサービスを販売したものの、まだ取引先から入金されていないお金です。


例えば、100万円の商品を販売し、代金の入金が翌月だった。
売上は今期の利益に反映されますが、販売時点ではまだ100万円の現金は入ってこない。


売上として計上されたものの、未回収の金額(売掛金)が50万円増えたと考えます。
利益が増えても、売掛金の増加分だけ現金の増加は後からついてくることになります。

②在庫に30万円が姿を変えた

A社では売上の増加に備えて仕入れを増やした結果、在庫が30万円増加しました。


例えば、
30万円分の商品を仕入れて、その代金をすでに支払ったとしましょう。
会社の現金は30万円減ります。


しかし、まだその商品を販売していないので、30万円全額が今年の費用になるわけではありません。

③減価償却費40万円は、利益を減らすけれど今年お金が出ていない

A社では今年、40万円の減価償却費を計上しています。


減価償却とは、設備などの取得価額をその設備を使用する期間にわたって
費用として配分する会計処理です。


今年40万円の減価償却費を計上したからといって、
あらためて40万円を支払ったわけではありません。


利益を計算するときには40万円の費用として差し引かれますが、
その40万円に対応する現金支出は、設備購入時にすでに発生しています。


ですので、利益から実際の現金の動きを考える際には、減価償却費40万円を足し戻します。

④設備に100万円が姿を変えた

A社はさらに、事業拡大のために100万円の設備を購入しました。


会社の現金は100万円減りますが、その年の費用として全額計上されるわけではありません。
設備は複数年にわたって使用するため、減価償却によって少しずつ費用として計上されます。


設備を購入した時点では現金が100万円減る一方、
利益には購入額100万円がそのまま費用として反映されるわけではありません。

⑤借入金の返済に50万円が使われた

A社はさらに、銀行から借りていたお金の元本を50万円返済しました。


👆ここも利益と現金の違いを理解するうえで重要なポイントです。


借入金を返済すると、会社の現金は50万円減ります。
でも返済した元本は費用ではないため、利益は50万円減りません。


利益には影響しないのに、現金は減るということが起こります。


補足ですが、
借入金の利息は費用になるため、元本の返済とは分けて考える必要があります。

利益は100万円増えたのに、現金は90万円減った

ここまでのA社の状況を、キャッシュフロー(現預金の増減)の観点から整理してみましょう。


A社は前年と比べて、利益が100万円増えていました。


一方、営業活動によるお金の動きを見ると、

  • 売掛金の増加:−50万円
  • 在庫の増加:−30万円
  • 減価償却費の足し戻し:+40万円

となります。


まとめると、
100万円 − 50万円 − 30万円 + 40万円 = 60万円
営業活動によるキャッシュ・フローは+60万円です。


さらに、

  • 設備投資:−100万円
  • 借入金の元本返済:−50万円

があるため、
+60万円 − 100万円 − 50万円 = −90万円となります。

利益は100万円増えたのに、現金は90万円減った。という結果になりました。
でもこれは「利益100万円が消えてしまった」という意味ではありません。


A社では、
売上の一部がまだ売掛金として回収されていなかったり、在庫を増やすために先に支払いをしたり、設備投資や借入金返済によって現金が出ていったりしたことで、利益の増加と現金の増減に大きな差が発生しました。


だからこそ、
利益が増えたときには、「利益はいくら増えたのか?」だけでなく、「その結果、会社のお金はどう動いたのか?」まで確認することが重要なのです。

利益が増えても、お金が増えない主な理由を整理する

利益が増えても会社のお金が同じように増えない理由は、いくつかのパターンに整理できます。

利益と現金のズレを生む要因何が起きている?
売掛金の増加売上は計上されているが、まだ入金されていない
在庫の増加仕入れ代金を先に支払っているが、まだ売れていない
減価償却費利益を計算するときは費用になるが、今年の現金支出ではない
設備投資現金を先に支払うが、購入額がそのまま当期の費用になるわけではない
借入金の元本返済現金は減るが、元本返済は費用ではない

こうして見ると、
利益と現金の差が生まれる理由には、

  • お金が入ってくるのが後になるケース
  • 先にお金が出ていくケース
  • 利益と現金の計上タイミングが異なるケース

があることが分かります。


例えば、
売掛金が増えているなら利益は出ているものの、まだ回収できていないということです。
在庫が増えているなら、今後の売上につながる商品にお金が変わっている可能性があります。


そのため、「利益が増えたのにお金が増えない」という現象だけを見て、「会社は儲かっていない」と判断するのは早計です。


重要なのは、なぜ利益と現金の増減に差が生じているのかを把握することです。

実は、利益が増えている会社でもお金が増えないことがある

成長すると、先にお金が必要になる

売上や利益が順調に増えている会社でも、
手元のお金が思うように増えないことがあります。


事業が成長しているからこそ、お金が先に出ていくケースもあります。


例えば、
売上が1,000万円から1,500万円に増えたとします。


売上を増やすためには、これまでより多くの商品を仕入れたり、従業員を増やしたり、設備を増強したりする必要があるかもしれません。
取引先への販売が増えれば、入金されるまでの売掛金も増える可能性があります。

すると、

売上が増える
→ 仕入れ・人件費・設備投資などが先行する
→ お金が先に出ていく
→ 売掛金も増える
→ その後、売上代金が入金される

という流れが生まれます。

「お金が増えない=儲かっていない」ではない

ここは非常に重要です。


利益が増えているのにお金が増えないからといって、
必ずしも会社の経営が悪化しているとは限りません。


売掛金が増えているのであれば、すでに売上として計上されているものの、まだ入金されていないだけかもしれません。


一方で、売掛金が増え続けている、借入金の返済負担が大きいなど、利益が出ているのに資金繰りが苦しくなっている場合には注意が必要です。

だからこそ経営者が見るべきなのは、

「利益が増えたか?」だけでも、
「お金が増えたか?」だけでもありません。

「なぜお金が増えたのか、なぜ増えなかったのか?」

という理由です。


利益と現金の動きをセットで確認することで、会社が成長するためにお金を使っているのか、それとも資金繰りに問題が生じているのかを判断しやすくなります。

自社のお金がどこに行ったのか確認する方法

「利益が増えているのに、なぜ自社のお金は増えないのだろう?」と感じたとき、まずは、利益の増減と現預金の増減を比べることから始めます。

まず「利益」と「現預金」の増減を比べる

例えば、ある会社の前年と今年の数字が次のようになっていたとします。

前年今年増減
利益300万円400万円+100万円
現預金500万円530万円+30万円

この会社では、利益が100万円増えています。
一方、現預金は30万円しか増えていません。


利益の増加と現預金の増加には、70万円の差があります。


まずは、この差に気づくことが重要です。

「利益と現金の差」が生じた理由を確認する

次に、その差がどこから生まれたのかを確認します。


まず確認したいのが売掛金と在庫です。

  • 売掛金が増えていないか
  • 在庫が増えていないか

売掛金が増えていれば、売上は計上されているものの、まだ入金されていない可能性があります。
在庫が増えていれば、今後の販売に備えて商品などにお金を使っている可能性があります。


次に確認したいのが、設備投資と借入金です。

  • 設備や機械などを購入していないか
  • 借入金を返済していないか

設備投資をすれば現金は減りますが、その購入額がそのまま当期の費用になるとは限りません。
また、借入金の元本返済は費用ではないため、利益を減らさずに現金だけを減らします。


利益と現金の差を生んでいる項目を一つずつ確認していくと、
「お金がどこに行ったのか」が見えてきます。

「利益の行方」を説明できれば、会社のお金が見えてくる

最終的に目指したいのは、利益と現金の差を自分の会社の数字で説明できる状態です。


例えば、
「今年は利益が100万円増えた。でも現預金は30万円しか増えていない。なぜだろう?」


という問いに対して、


「売掛金が40万円増え、在庫が20万円増えた。一方で設備投資も行ったため、利益ほど現金が増えなかった」


というように説明できれば、会社のお金の動きがかなり見えるようになります。

①利益はいくら増えたか
②現預金はいくら増えたか
③その差はなぜ生じたのか

の3つをセットで確認することで整理しやすくなります。

まとめ|利益の「額」だけでなく、その行方を見る

いかがだったでしょうか?

経営者が見るべきなのは「利益がいくら増えたか」だけではありません。

①利益はいくら増えたか
②現預金はいくら増えたか
③その差はなぜ生じたのか

この3つを確認することが大切です。


利益が増えているのにお金が増えないときは、「儲かっていない」と決めつけるのではなく、増えた利益と会社のお金の動きをセットで確認してみましょう。

ここまで読んでい頂きましてありがとうございました。

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